Pro’s Views

[Pro’s Views] (5)イベントディレクター 北原隆さん

様々な業界の第一線で活躍されているプロフェッショナルたちにその視点や意識などについてお聞きするインタビュー「Pro’s View」。

今回は、企業展示会や販促イベントなど様々な催事のディレクションや空間の設計をはじめ様々な分野で活躍されている、イベントディレクター北原隆さんにお話を伺います。本業の他にも、専門学校や講演会等の講師として次世代のイベント関連のクリエイターを育成している北原さんに、お仕事や日々の視点の話など、様々なことをお聞きしました。

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■仕事のこと

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イベントにまつわることなら何でも幅広く手がけていて、明確な肩書きはないんですけど、プロデューサーというよりはイベントディレクターと呼ぶほうがイメージが近いです。最近ではLED関連団体の理事もやっていて、LEDを展示空間デザインや現場の運営に活かす啓蒙を行う講演に講師として登壇したりもします。

イベント業界を目指す学生や若者向けに、舞台監督や音響オペレーター、照明さんなどイベント関連の様々な専門家を招いて私と現場の話題で対談してもらう「搬入口会議」というイベントも主宰しています。私がこの業界に入ったばかりの頃、展示会やライブなどのイベントに行くと搬入口に先輩方が集まってタバコや缶コーヒーを手に「あそこの現場はこうだったね」などと話していたのが印象深くて、そんなタイトルになりました。書店に並んでいるイベント関係の本を見ても、プロデューサー的役割の人が書いたマーケティング寄りの本は多いんですけど、ディレクターなど現場の人間が書いた本は少ないので、こういう勉強の場は貴重なんです。

使っているスマホはiPhone5sです。以前はiPhoneが使いたくてソフトバンクを使っていましたが、仕事柄けっこう辺鄙な場所に行くのでつながらないことが多く、ドコモのケータイをiPhoneと別に持っていました。ドコモがiPhoneを扱い始めてからようやく1台に集約できました。

授業や講演をすることが多いんですが、プロジェクターに投影する資料はスマホのSidebooksを使うので、ノートパソコンやパワーポイントは使わなくなりました。登壇するときは手元は軽い方がいいんですよ。逆に、iPadはもう少し大きいサイズになると嬉しいですね。提案の時などには先方にカタログをお見せすることが多いので、せめてA4サイズが1/1で表示できるようなタブレットだといいです。

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■世の中を見ること

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空間デザイン系の専門学校や大学で学生たちに教えるようになって10年以上経ちますが、最近は学生の気質が丸くなってきた気がします。僕らの頃は、中学や高校の頃に人とどこか外れていて、専門学校や大学に入ってようやく居場所を見つけつつも、やっぱり自分が一番なんだとつっぱっているような人がデザインの世界に入ってきた。でも今は、デザイン系ではない他の普通の学校の生徒と大して気質が変わらないんですよね。

例えば課題を出したとして、回答の例を3つ出してあげると、昔の学生なら「先生の出した解答例なんて意地でも使わない!」「その3つがオッケーなら、これもオッケーだろ」と自分なりの答えを創っていたものですが、今の学生は必ず提示した3つの例のどれかで来る。しかもそれを自分で考えましたと錯覚しているので、これは怖いことですよ。

また他のイベントの現場のプロたちも口を揃えて言うのが、有望な新人はみんな女性になってきているということ。面白い設計をするのも興味深い論文を書いてくるのも、女の子が多い。また声優やアイドルなどは、昔はどこかアウトローだったのが最近は普通の女の子になってきているので、そんな子たちを現場でケアするためにも、女性の舞台監督やディレクターの存在意義がますます高まってきています。今はつらくてどんどんやめるのは、男のほうですね。

東日本大震災の時、いきなり半年後までの仕事が全てキャンセルになりました。知り合いのイベント関係者たちもみんな、チケットの払い戻しなど大変だったようです。電気を使っているというだけで、アーティストや劇団のイメージが悪くなるというんですね。でも、着実にまた仕事は戻っていきました。バブル崩壊やリーマンショック後も東日本大震災の時と同じようにガックンと業界の仕事は落ち込みましたが、こういう時は例えば代理店や空間プロデューサーなど口だけ出してマージンを持っていくような何もしない人の無駄さをクライアントが気づくきっかけになり、こういう業界のピンチの時には、実力のある人ほど逆にチャンスになるものだなあと感じますね。

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■出かけること

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仕事では各地に行きますが、プライベートでもよく出かけます。車が趣味でスーパーセブンに乗っているんですが、全国の車好きと集まることが多くて、先日もみんな愛車で神戸に集結し、そこからフェリーで九州へと渡ったんです。東北や信州などに行くことも多いですね。

考え事をする時には散歩もよくします。オフィスが品川区の武蔵小山にあるんですが、林試の森公園を抜けて目黒不動まで歩いたり、戸越銀座のほうを散策したり。この界隈はいろんな人が住んでいるので、それらを見て歩くだけでも楽しいんですよ。

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■お気に入りの風景

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これは、渋谷のヒカリエができた時にJR渋谷駅前をスマホで上から撮った写真です。僕は子どもの頃に中目黒に住んでいて、渋谷駅はずっと遊び場だったんです。都電の駅がなくなってバスターミナルになって、タクシーの列がなくなって、映画館やプラネタリウムがなくなって、とその変化をずっと見てきましたが、ヒカリエができてようやくこの場所を上から見られるようになったので、この写真が僕にとっては上から見た初めての渋谷のロータリー。数年でまたこの風景も変わってしまいますが、こういう街の移り変わりを見るのはとても興味があります。

■北原 隆 (きたはら ゆたか)
イベントディレクター。東京都出身。
アトリエかたくりこ代表所長。企業展示会、プレス発表会、ライブステージなど、イベントの運営や空間デザインにまつわる様々な仕事を手がける。また専門学校や大学での授業、イベント業界団体の講演や研修などの講師としても活躍中。
次世代のイベント業界の人材を育成するためのイベント「搬入口会議」を主宰。
公式ブログ:「アトリエかたくりこブログ

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